「ジャパニーズ・フィリピノの子どもたちのアイデンティティと文化」は一読の価値あり
東京都武蔵野地域で外国人の生活支援や地域住民の国際理解を推進するNGO「ピナツボ復興むさしのネット」が編纂した、フィリピンの日常生活を平易な文章で主に子供向けに紹介した本です。 ハロハロやチキン・アドボといった代表的なフィリピン料理のレシピー、市民の足・ジープニーの模型の作り方、童謡の歌詞と楽譜といった楽しく愉快なテーマをいくつも取り上げています。 フィリピン人に対するイメージは陽気でのんびり屋、悪くいえば怠惰で貧困といったものが一般的ではないでしょうか。しかしそれはあくまで几帳面で正確無比を旨とする日本の文化的視点から眺めた相対的な先入見でしかないのかもしれません。日本人男性との間に3人の子供をもうけたあるフィリピン人お母さんのエッセイが掲載されていますが、そこでは日本の学校になじめない子供を連れて故郷イロイロへ一時帰国したときの様子が大変示唆的に描かれています。ある日息子が地元の子供たちと大雨の中で泥んこ姿で遊んでいる様子をこのお母さんは目にします。日本では経験できないようなおおらかな自由の空気をそこに感じて綴る文章には、母であることそしてフィリピン人であることの誇りと喜びが溢れています。 日本とフィリピンという二つの文化に育まれて生活するこの息子たちは自分たちが何人なのかと尋ねられると「日本人とフィリピン人」と答えるのが常だとあります。この答え方は考えてみれば何も不思議なことではなく、事実そのものなのですが、それでも私たち読者はどこかでこの言葉に感動してしまうのではないでしょうか。異なる文化をもった両親から生まれた子供は決して「ハーフ」ではなくて二つの文化を体現する「ダブル」であることを改めて教えてくれます。 胸を打つ文章として一読の価値があります。
国土社
フィリピンに暮らす 物語 フィリピンの歴史―「盗まれた楽園」と抵抗の500年 (中公新書)
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